いつものことだが、立春を過ぎると、意地みたいに寒い日が続く。
しかし空は澄んでいて、日が長くなるから太陽光発電には意外と良い季節だ。
2月10日 梅の古木に花が咲く
今年は開花が早かったそうだ。
青空をカンバスにして、紅白の梅が咲きにおう。
富士山を遠景に 、日溜まりの中に、可憐な花が咲く。
補植された梅の木もあるが、存在感のあるのは古木だ。
「よくぞ今年も花をつけた」と思うくらいの古木がある。
そんな木を見ると、自然に頭を下げてしまう。
碧空(あおぞら)の カンバスの中 ひそやかに
いのちをつなぐ 古梅の神は
2月10日 湯の国は黄昏れて
知人と約束した夕食の時間調整で、「華の湯」という「日帰り湯」に入る。
大浴場は修理中で、4Fの小さな木の風呂に入る。
これがまた良くて、すぐ地元の人が来て2人で満員(⌒▽⌒)
よく暖まるお湯で、5分位で汗が出る。家の風呂とはまったくちがう。
4Fのおかげで、展望のよい席で休む。
陽が傾き始めると、低く長く伸びる伊豆の背骨の山並みは、朱く映える。
不思議なことに、ワタシの耳には、「湯の町エレジー」の曲が流れてくる。
狩野川の橋を渡って、宴会場?(本当は居酒屋さん)のある駅にむかう。
夕やけに 染まりて延びる 伊豆の山
湯の町のヒト 我は成りたり
2月15日 春のこと始めに畑を起こす
今日あたりは、畑仕事日和(はたけびより)だ。
年来の課題「本格的な春キャベツ生産!」を実行する「決行日」とした。
車で畑に来て、まず目につくのは、秋野菜の収穫の終わったトンネルである。
ネットを外すと、そこだけが雑草が大繁盛している。(肥料が残っている?)
「一日なんかで準備は出来ない」と居直って、ダラダラと少しづつ掘り起こす。
草の土を落として、根を上にして小さな、集積を作る。乾かした方が始末がラクだからだ。
(怠け者らしく)少しやって一服していると、あることに気づいた。
小鳥が一羽、ピョコピョコと、先ほど抜いた草の上にいるではないか。
初めて見る景色で、そっと近寄るが、鳥は横目でこちらを見て、すぐには逃げない。
「あ、セキレイだ!」と気づく。
根に土を着け逆立ちの草は、鳥から見れば、「餌になる虫の並んだ食卓」ではないか・・・
近寄るのをやめて観察すると、かの鳥は一生懸命ついばんでいる。
怠けやすいニワカ百姓としては、面白い光景に感動し、早く帰る口実が出来たのである。
カメラを持ち合わせていなかったので、ネットで調べるとやはりセキレイだ。
流れのそばでなくても、里山にいることも多いとか・・・
さらに調べると、三島市では、神の使いとして捕まえないそうだ。
ひだまりに 春の始(はじめ)と 畑(はた)おこす
セキレイきたり 虫ついばむか
2月18日 梅ヶ島便り
時は今、「梅ヶ島」は、なにしおはば・・・今が盛りの「梅の里」である。
その他に、安倍峠のハイク、温泉ハシゴと、欲張り三昧。天気まで味方だった。
宿にザックは置いて、梅が島新田(しんでん)の辺りを歩いた。
無形文化財である「神楽の里」である。その舞台になる稲荷神社も参拝した。
近年になって偶然発見したこの宿は、何度か泊めてもらうことになった。
すっかり仲良くなった、宿のご主人のはなしは面白い。
*「箱膳:はこぜん」を復活させたい、宿の主としての話。
* 神楽のなかの恵比寿舞では、伊勢神宮からきた使者が登場する下りがある。
今でも地域で伊勢参りをされるそうだ。
この話は、海彦山彦の話を彷彿とさせる、伊勢と駿河とのつながりか・・・
今日も尽きるところがないくらい・・・炉端で話を伺った
夜も更けて友との話が途切れると、旧い時計のチック・タックがきこえてくる。
時がゆっくり流れる。奥山の夜は更ける。
この歳になると、静かな夜が千金の贅沢と思えてくる。
人間がしゃべらないと、夜の声が聞こえてくる。
奥山に すごすひと夜は 会話(はなし)絶え
時計の語り 炉端(ろばた)流れる。
2月19日 春まだ寒き安倍峠
翌日は梅ヶ島から登山道経由で安倍峠を目指す。
登り始めて一時間半程度で、高度を稼ぎ、冬季閉鎖の山梨とつながる車道に出る。
ここはまだ冬の世界で、日陰には雪と氷りが残っている。
安倍峠から流れ出す小さな谷川をのぞき込むと、雪解けの水が、勢いよく岩の間を流れる。
しかし氷柱も大きく伸びて、川面に届くほどだ。
流れや、滝を楽しみながら、里に下りる。
ここから半時間ほど歩けば、市営の温泉施設の「黄金の湯」につく。
ここが今回の旅の終点である。
さあ、露天風呂とビールが待っている。
少しぬるめの露天風呂に入る。
まだ風は寒いから、首までどっぷりと浸かる。
寒いから湯からは出ないで、顔だけ上げる。
湯船からは、安倍奥の山が見える。
別に岩手の啄木さんでなくても、誰でも
ふるさとの山に向かいて言うことなし
ふるさとの山はありがたきかな
学舎(まなびや)の 朋友(とも)と ならんで 露天風呂
湯気を透(すか)して ふるさとの山
2016/02/20 前嶋 規雄 サイトトップへもどる