吟遊詩人 師走の東奔西走       サイトトップに 

通常の「師走」は落ち着いているべき先生でも、忙しくて走ってしまうから「師走」という。
ところが、この吟遊詩人は、年末に吟行がしたくて、それもあちこちに行きたくて、「東奔西走」になったとのことである。
従ってこちらは12月は「詩走:しわす」といい、史記にも載っている!

(バレるかこのウソ)。

 この吟遊詩人は、忙しいので、仕事に行ったついでに、旅行をしてしまう性癖がある。

今回はまず、茨城の水戸から大洗海岸を訪ねた。次は大阪に仕事に行った帰りに、京都でカミさんに頼まれたオセチの食材を買いに、かの有名な「錦小路」を訪ねている。

しかしながら、感動すべき「風景」に出会っている。

 

 感動すれば詩人の頭には、三十一文字が奔流(ほどばし)る。

しかし「言の葉」の表現力ではどうしても感動の30%くらいしか、伝えることは出来ない。

そこで「映像による見える化」が手段となってくる。これで感動の80%は、目で見た人に伝えられる。

目も不自由な人や、漢字が読めない人(外人はそうだ)のためには、音しか残っていない。

別の効果は、音読したときの耳を通じた「響き」である。

脱線するが、「私の耳は貝の殻、海のひびきを懐かしむ・・・」、「秋の日のヴィオロンの・・・・」

明治の堀口大学や、上田敏さんの「再創造」はすばらしい。

今回は2015年の「師走または詩走」を例題として説明する

 

20151203 師走の大洗へ

 

 出かけた東京の仕事を早めに切り上げて、新橋から常磐線の特急で水戸に向かう。

中学時代の親友との今年の忘年会が、思いついて、大洗でおこなうことになったからだ。

大洗は、かねて一度訪れたかった宿泊地である。

水戸にむかう電車の窓外は平野が続く。本当に関東平野には筑波山だけしかない。

 水戸の手前で、つい先ほどまでの雨が上った。西日に雲が色づく。

 

 

水戸から鹿島臨海線に乗り換えるのである。

鹿島臨海線はローカルな2両編成のディーゼル線

ワンマンカーが海辺の町を目指して田園をはしる

 

 少し賑やかなディーゼルの響きを

 静かな風景に しばし残して!

 

     ディーゼルの 響きを原に ひきつれて

               ワンマンカーは 海辺を目指す

 

 この日急成長した低気圧のせいか、おもわぬほどの波が大きく寄せて、磯にとどろく。

初めて訪れた大洗の海は、目と耳に、ダイナミックな印象を残してくれた。

 

                    写真撮影 槇原さん

 

 ふとんに入っても、浜辺に面した宿の、厚いまどガラスを隔てて、潮鳴りがとどく。

しばらく、眠り込もうとしないで、いろいろなことを思い出していたが・・・・

 

    涛の音 とどろき渡る おおあらい

       冬の旅寝(たびね)に  こし方想う

 

 

 

20151218

  今日から急に寒い。大阪のホテルの玄関を出たらブルっとする。年末は恒例の(お役目となっている)お節料理材料の買い出しに、京都の錦小路に行く。
本当の目的地はそこだけなのだが、いつも寄り道を考える。

今年はなぜか、高槻で下車して、戦国時代の交通の要衝であった京口町を歩く。

阪急電車に乗り換え、河原町で電車を降り、ぶらりと歩き始めた。

高瀬沿いをあがり、先斗町をくだり、さらに八坂神社を詣でた。


 鴨川の四条の槁から、なつかしい北山を見る。寒いはずだ。たしかに初雪が見える。
川面にはユリカモメが羽をやすめ、はてまた冬空を飛び回る。

彼らはことしもカムチャッカら、義理堅くとんできて、一月中は「京都ご滞在」とのことだ。

 

 

 

 

「ゆりかもめ」は「都鳥」として、学校で習った伊勢物語「東下り」にでてくる、「名にし負はばいざ言問はむ都鳥」のあれである。

 

 鴨川の 流れ忘れず みやこどり

今日の寒さか 北山(きたやま)白く

 

 橋の南には当然「南座」がデンとすわる。年の瀬の恒例である「顔見せ」興行の「まねき」がならぶ。

顔見世」は江戸時代の歌舞伎の11月の興行をこう呼び、毎年10月が役者との契約が切れることから、11月に新しい顔ぶれを披露したことが所以とか・・・

いまでは12月に京都で顔見世興行がある。

 

 


 「小路」都の食文化の最高の食材を集める市場である年末は特に混み合うが、今年は目算で3割くらいが外国人で、その分だけ、道が歩けない状態になっている。

 

 日本海側から運ばれる海産物は多いが、蟹系ない。昔は流通がむずかしかったのだろう。

私がお目当てのボウダラ(棒鱈)は北前船が日本海から運んできた、乾物である。

(いまでは北海道北部が主産地であるらしい。何日も、冷たい海風で旨みを凝縮させる)

 

 京都にかって暮らした人間には、この味が忘れられないらしい。

主婦が日数をかけて炊き上げる。これがおせち料理の最高峰と、今でも信じて疑わない。



  顔見世の まねきがならぶ  としのせや
      市場(いちば) 棒鱈(ボウダラを買う

 

       2015/12/20サイトトップに 

 

 

 

 

 記   前嶋 規雄      年の瀬の京都大洗)(