長期エネルギー需給見通し
     2015年6月23日   オフィス エム・ソリューション 
 資源エネルギー庁の「長期エネルギー需給見通し」に対するパブコミに意見提出をしました。
  本稿は最近のデータを加筆したものです。   2015年10月31日 作成

1 エネルギーの自立が国家の最大課題

近代史を振り返ると、産業革命以来 エネルギーが国家間紛争の最大の根源であり、先の太平洋戦争の南進作戦が意図を示したように、戦争の発端はまさにこれであった。
戦後も数次のオイルショックを経て、今も、これからも続く。
解消するには、エネルギーの自立が国家課題なのであり、これを乗り越えてこの国は成熟国家へと進む。
原発はエネルギーの自前化という意味で、「高度成長日本!」がたどり着いた一つの選択肢であった。しかし予期に反し繰り返された事故を覆って、安全神話に陶酔しても、とうとう後戻りできないあの蹉跌が、福島の人災とも言われる事故であった。
今でも廃棄まで含んだ全サイクルに対応できる技術実績は、日本はもちろん、フランスや他の先進国にもない。国際テロの危険はますます増大し、原子力施設がそのターゲットであることは否定できない。
国民の消せない不安感を、当面は「国富の流出を防ぐ」を言い訳に、押さえることは出来るかもしれない。
しかしその安寧コストを、kwhあたりいくらと算定するのか?いずれにしてもこの国がどんな将来を目指すのかで目標は決まる。

2 市民としてエネルギーの自産自給に取り組む

小生の立ち位置の説明になるが、築22年の住宅に太陽光発電を3.4KWを載せて今まで1346日稼働している。年間で4800kwhの発電をし、オール電化の自宅の消費電力は6850kwhである。
差し引きでは足りないが、小規模の蓄電設備があれば、電力の自給自足は指呼の間の目標とすることは出来る。(今足りない分は、市民発電に出資させてもらい、出資額分で年間で6600kwh程度の発電量になっている)
省エネ全般に関しては、分散電源など学習を続けた結果、資エネ庁さんの関連法人から「家庭の省エネエキスパート指導級」の資格を認定していただいた。年金世代の我が家でもLED、TV、エアコン、インプラス窓、瞬間加熱便座、ハイブリット車・・・を導入している。
資料から、家族構成などが同規模家庭と比較すると、無理なく半分以下に「省エネ化」ができた。

3 長期見通し案について思うこと

さて「Sプラス3E」の資料を精読して素直に感じたのは、見通しとは「量に関する無難な答案」である。
「エネルギーを構成する中身の変革に対する、国家の意思が感じられない」。
その最大の理由は、言うまでもないが、手段としての「再生可能エネルギーのポテンシャル」を、残念ながら結果として、「政策」が削いでしまったことにある。

そのポイントは次の3点である 。

3.1

「普及するほど国民高負担」の諦観を国民に定着させてしまった。
その証拠は戸建て住宅の実績をとっても、実際にソーラが載せられたのは可能な戸数の1/10以下である。
人間は地球という自然の一部であり、人間として本来あるべき「自産自消」を遠ざけた。
買い取り施策は日本の潜在技術力からも、自然エネルギーが普及することで、得意のコスト低減⇔量の拡大というサイクルを回す、加速力となるはずだった。

3.2

電力系統を広域化する公的資金の投入が遅れており、再生可能エネルギーの導入が制限されている。最近の報道では、電力の託送コストが約8円/kwhとあっては、分散電源普及で大きな制約と言えよう。ドイツなどでは急速なグリッド化に国家が力を入れている。
裏返せば原発や、大型火力などの集中電源は長距離送電が必要であり、実質コストは高い。

3.3

家庭や系統電力グリッドなどに適した蓄電装置を早急に配置すべきである。
非化石燃料由来などの水素等を含め、早期に全力で技術開発を促進し、クリーンで安全な電力の普及を進めなければならない。長距離高コストの送電そのものには付加価値はない。
以上の3点の是正と促進で、「再生可能エネルギーでベース電力の構築」すら可能になる。

再生可能エネルギー以外の発電手段については以下のように考える。

3.4

原発は必要条件「S:安全」の項目でアウト。やめることが創造的破壊の好例である。
「見切り千両」で早くたたむことだ。「こだわって延命」は日本の脱皮成長の妨げとなる。
周りの国を見ても、もう決心の時だ。

3.5

ガス発電は環境問題は残るが、燃料自給は将来も不可である。
複合コンバインドのガス方式は、再生エネルギーの風力などが立ち上がるまでは、リリーフ役であり、小型のガスタービンは事業所の自前発電のバックアップ目的でも有用である。

3.6

石炭は高効率でも環境で不可(国際的に通用しない)でメインには出来ない。
日本は再び世界中から、化石燃料の確保に走っているが、あくまで化石燃料はショートリリーフである。
中国が風力、太陽光発電で世界一となり、石炭の消費削減を進める意味を考えたい。
日本が目先のカネを追う二流国と呼ばれるのは、本当にイヤだ。

4 エネルギーミックスを論ずるなら長期の時間軸で全体像を見る

まず「発電コスト」だけを細かく論じても説得力は弱い。
設備容量は中身を問わなければ、すでに年々余っている。
長期の時間軸で、エネルギー全体の視点なら」実は電力だけではない。
エネルギ需要に占める電力は全体の1/4しかない。「輸送機器」なども含めて対策すべきである。
発電+蓄電の進歩に限りはない、「電力は作って使う」のがフツーになる。

江戸の町でも、どこにも自然の恵みを活用する天水桶があった。較べて今はどうなのであろう。
個人的には、度成長の時代をものづくりに携わってきた一員として、感慨と疑念がある。
それは製造業が、いつまでも「高い電力の被害者」を言い続けるべきなのだろうか?ということだ。
電力のコスト感度が高いなら、最適品質の電力を内製して、製造コストを下げようとしないのか?

☆日本でもトヨタ、コマツ、レンゴーさんなど立派な実績が伝わってくる。

「自然エネルギーを紛れもない資産として、実体に変える発想」を持ったときに日本は変わる。
(円安でお金はあるのだ! 海外に投資をするよりも、まずこの国だ)

すでに単価がグリットパリティを達成した先進国であるドイツや、国策で急進する中国から学ぶべきは真摯に学びたい。
市民も企業ももちろん、国家も勇気をもって「エネルギーの自立化」に挑戦しなければならない。
「食糧の自立化」はその先に必ずある。

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